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「安全」を切り捨てない待機児童解消策 [保育について]

 同じく、平成28年4月3日に厚生労働省に送った「安全を切り捨てない待機児対策」の提案についてもアップしておきます。

「安全」を切り捨てない待機児童解消策

先に述べたとおり、保育士の配置基準と、面積基準には安全確保のための重要な意味(必要性)があります。いかなる待機児童解消策においても、保育士配置と面積基準の緩和はすべきではありません。

1.本質的には、保育士が安心して働ける処遇の改善を

(1)給与の底上げ
  ① 保育単価の増額(財源は後述)
  ② 労働分配率の縛り(小泉改革で規制緩和したものを復活させる)(財源不要)

(2)スキルアップの補償
  ① OJTで学べる環境の確保
   → 自治体からのベテラン保育士の派遣(後述)
  ② 研修参加のための代替職員の確保
   → 自治体からのベテラン保育士の派遣(後述)

  【自治体からの保育士派遣】
    急激な待機児対策のための保育園新設により、経験の浅い若い保育士しか居ない保育園が激増しています。しかし、経験値が低いことが、子ども達が一斉に泣いたり、それぞれがてんでばらばらに行動したときにキャパシティオーバーとなり、うつぶせ寝、閉じ込め、脅迫などの虐待に繋がっています。
自治体が民間事業者の支援策として、経験豊富な保育士を、例えば、経験年数5年未満の保育士しか居ない施設に1年間派遣しOJTで手本を示すなどの方策を採ってはどうか。(巡回指導は、監査に準じたものと意識されやすく、相談がしにくい、日常の保育中での問題点の解消につながらないことが懸念される。)
    また、研修に参加する機会を補償するためには、業務時間内に現場を離れられる人員体制が必要となるが、自治体から臨時的な保育士派遣をしてはどうか。

(3)仕事上のストレスの緩和
   保育園は、要保護児童や障害児の受け容れが進み、また、地域の子育て力の低下からナーバスな保護者が増加しており、保育士のストレスも増加していることが、保育士の退職原因の一つになっています。
 自治体が、臨床心理士や医師などの専門職を巡回させて、スーパーバイザーとして相談に乗る体制を整備してはどうか。

(4)奨学金の免除
   保育士養成校を卒業した人のうち約半数が保育所以外に就職している背景に、保育士は給与が安く、養成校に進学するために借りた奨学金を返済できないため、他職に就くというケースがあります。
   そこで、保育士として5年以上働いた場合には奨学金を半額免除、10年以上働いた場合には全額免除(政府が独立行政法人日本学生支援機構への返済を肩代わり)するなど、保育士としての就労を促進することとしてはどうか。

2.財源について
 財源の捻出方法について、指摘します。

(1)国庫負担の増額
   日本で少子化及び超高齢化が進んでいるにもかかわらず、子育て支援予算がOECDで断トツの最下位のGDP比1%程度であることからすれば、政府による財政支出を、まずはOECD平均のGDP比2.3%程度まで引き上げることは、喫緊の課題です。

(2)運営費の労働分配率の縛りを復活・厳格化させる
   規制緩和により、保育所運営企業の利益配当が可能になったり、正規雇用比率の縛りが無くなったりした結果、規制緩和前は運営費に占める人件費比率が70%台と言われていたのが、50%台の保育所もあるとの指摘がなされています。
運営費に占める人件費比率の下限を縛ることで、保育士待遇の改善の財源を捻出することが可能です。但し、同族経営の事業主体において、園長・主任・事務長などの役職手当を同族で受領し、一般保育士の処遇が低い園も見受けられることから、同族以外の者への分配率を報告させないと実効性が上がりません。

(3)事業者に対して保育士の定着率を公表させる
 保育士の定着率を向上させる工夫を各事業者に競わせることを誘引する目的で、法人毎・園毎の保育士定着率を、全体・1-2年目・3-5年目・6-10年目・10年目超などの区分で公表させてください。
 工夫の内容は、賃金のみならず、残業の有無、有給休暇の取得のしやすさ、仕事上のスキルの向上の機会の有無、保育士として長期に働くロールモデルの有無など、様々な工夫があり、、事業者が工夫を競うことで定着率が上がることが期待できます。

(4)高所得者への保育料の増額
   子ども子育て制度の枠組み内の保育所・子ども園・小規模保育などは所得に応じた応能負担により保育料を保護者から徴収していますが、多子減額などの調整はしつつ、高所得者の保育料を増額する、幼児クラスの保育料を増額する(幼稚園利用世帯との利用時間に応じた均衡をはかるとともに、幼稚園にも公定価格・応能負担を導入する)ことにより、財源を増やすことができます。
   ただし、世代間格差を考慮すれば、高所得や一定規模以上の資産を有する高齢者への介護保険自己負担率の増額や、高額療養費・高額医療費の還付制度の適用除外などを同時に進めるべきでしょう。

3.短期的な(今年度の)緊急対策について

(1)雇用主に対し、育休延長の配慮を求め、待機児となったことにより職場復帰できない場合の解雇を制限してください。
その裏付けとして、
  ① 育休職員の代替職員確保の費用を、雇用主に対して給付する
  ② 育休職員の社会保険料等の雇用主負担分を免除する
  という施策をお願いします。

(2)公共施設の空きスペースなどを活用し、定年退職保育士を活用したグループ保育を
   公立保育園を定年退職して再任用で他の職場で働いている保育士が各自治体に居るので、この人達を活用して、グループ保育を実施することは有効な対策です。この方法では、公務員の定年延長に伴い、もともと再任用している公務員保育士であり、新たな財政負担は生じません。

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