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保育施設での死亡事故防止のための緊急提言 [保育について]

 今月(9月)2日に、保育施設での死亡事故が立て続けに報道されたことを受けて、今週月曜日(9月12日)に、赤ちゃんの急死を考える会で、内閣府と厚生労働省に「『保育死亡事故』防止のための緊急提言」を持って行き、担当者と良い意見交換ができたと思います。
 それのリライトになりますが、アップしておきます。


保育施設での死亡事故防止のための緊急提言


【第1ターゲット】午睡中死亡を無くす

 保育施設での死亡事故(保育死亡事故)の7割は、午睡中の死亡です。(※1)
 0-1歳児の午睡中の①うつぶせ寝と、②保育士不在を無くせば、すなわち、
=①あおむけ寝、②保育士の在室を徹底すれば保育死亡事故の7割は無くせます。(※2、3)

【手段1】保育施設への午睡中の抜き打ち立入調査(さいたま市方式)

① 死亡事故の多い午睡中に抜き打ちで立入調査を実施することを保育施設に周知(アナウンス効果)
② 実際に抜き打ち立入調査を相当割合の施設に行う(全数とは限らない)
③ 午睡中の指摘事項(うつぶせ寝、保育士不在、暗すぎて顔色や呼吸が確認できない)の減少(さいたま市では平成24年度41%→平成27年度15%に減少。川口市も今年度から実施)

【手段2】立入調査時の保育士の欠員/不在・午睡中の状況に関する指摘事項の公表(※4)

① 死亡事故に繋がる保育士の欠員/不在・午睡中の状況に関する指摘事項は、一発公表を周知(アナウンス効果)
② 実際に抜き打ち立入調査で、保育士欠員・午睡中の指摘事項(うつぶせ寝、保育士不在、暗すぎて顔色や呼吸が確認できない)があれば公表する
③ 保育士の充足・午睡時の保育室在室・あおむけ寝が徹底される

【手段3】1歳児の保育士(保育者)配置基準を3:1に上乗せする

 小児科学会の保育施設での死亡事故に関する報告(※5)で、「1歳以上では死亡事案が発生している施設の76.5%が認可基準を守っている施設であった。このことから1歳以上の保育士一人当たりの園児数に関する認可基準の妥当性を再検討する必要が示唆された」と指摘されています。
 1歳児のうつぶせ寝死亡事故の実態を見ても、保護者との分離不安で泣く1歳児を黙らせるためにうつぶせに寝かせるケースが多く見られており、抱っこ・おんぶをできる人手が、うつぶせ寝禁止の実効性を担保します。

【手段4】以下の2点を周知するポスターを午睡室内に張り出すよう各施設に配布

・0~1歳児は絶対にうつぶせに寝かせないこと(寝返りした場合も仰向けにする)

・子どもが睡眠中の部屋を保育者不在にしないこと


※1 厚生労働省・保育施設における事故報告集計 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072858.html

※2 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン 【事故防止のための取組み】~施設・事業者向け~http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kyouiku_hoiku/pdf/guideline1.pdf#search='%E5%86%85%E9%96%A3%E5%BA%9C+%E4%BF%9D%E8%82%B2+%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3'

※3 米国国立衛生研究所(NIH):Safe to Sleep 乳児死亡のトリプルリスク https://www.nichd.nih.gov/sts/campaign/science/Pages/causes.aspx

※4 死亡事故発生施設の立入調査結果を事後的に情報公開請求すると、保育士欠員やうつぶせ寝が指摘されているケース、過去に同種事故を起こしていたケースが多々見られる。

※5 日本小児科学会誌118号11巻1628~1635頁(2014年)http://www.blog.crn.or.jp/lab/m/pdf/lab_09_06.pdf

【第2ターゲット】誤嚥事故を無くす

 保育施設での死亡事故で2番目に多いのが、1―2歳児の誤嚥死亡事故です。認可保育所でも多く起こっています。
 子どもの嚥下機能(丁度いい量、タイミング、スピードの認知機能、咀嚼機能、嚥下機能)の脆弱性を補うために、保育士による観察、声掛け、介助が必須です。
  
【手段1】食事・おやつ時の1歳児の保育士(保育者)配置基準を3:1に上乗せする

 厚生労働省の認可外保育施設指導監督基準には、「食事の世話など特に児童に手がかかる時間帯については、児童の処遇に支障を来すことのないよう保育従事者の配置に留意すること」とされています。(何故か東京都の基準からは抜けている!!)
 多くの認可保育所では、独自に0、1歳児の昼食時に保育者を加配していますが、質の低い施設においても、子どもの命を守るための「最低基準」として、特に、食事時間帯の保育士配置を厚くすべきです。


【おまけ】小規模保育の年齢拡大に関する手当て

 大前提として、3歳未満児(0-2歳)の小規模保育所(A型)は、私自身が2009年11月に新聞紙上で提案したぐらいで、有効な待機児対策だと思って期待しています。
 他方で、小規模保育所は定員19人以下の認可施設ですから、自ずと職員数が限られます。規模の利益が得にくいため、少ないスタッフ人数で保育しなければならず、実際の運用は大変です。
 そして、3歳未満児(0-2歳)と、3歳以上児(3-6歳)では、発達段階が大きく異なります。保育施設での死亡事故は3歳未満児に集中しています。
 スタッフの少ない小規模保育所で、3歳未満児の死亡事故を防ぎつつ、3歳以上児の発達を保障するのは、極めて困難だと考えています。
 具体的な数字をあげて検討してみましょう。

 現行の必要職員配置数の算定方式(※1)に当てはめると、例えば、0歳児6人、1歳児6人、2歳児6人、合計18人の小規模保育所では、保育士4人の配置が必要でした(B型では保育士2人で可)(※2)。4人の保育士がいれば、園児の食事時間をずらすことによって、食事の世話など特に児童に手がかかる時間帯をカバーすることが可能になります。
 ところが、今回の対象年齢の拡大により、基準上は、0歳児3人、1歳児3人、2歳児3人、3歳児3人、4歳児3人、5歳児3人、合計18人の小規模保育所では、保育士は3人いれば基準を満たすことになります(B型では保育士2人、無資格者1人で可)(※3)。
 しかし、実際には、9人の3歳未満児を2人の保育者で安全に見ることは不可能に近いです。死亡事故が起きている施設でよくあるように、泣きぐずる子を黙らせるためのうつぶせ寝の横行や、食事の誤嚥による窒息事故の危険を高めます。

 そこで、どうしても小規模保育所の対象年齢を3歳以上児に拡大するのであれば、以下に挙げる保育士配置基準の見直しとセットで行い、安全を期するべきです。

【手段1】1歳児の保育士(保育者)配置基準を3:1に上乗せする

 1歳児の配置基準を3:1に手厚くすることにより、上記のケースでも3歳未満児9人に対して3人の保育士が必要となり、うつぶせ寝の禁止や、食事中の誤嚥防止が可能になります。

【手段2】3歳未満児と3歳以上児の保育士配置を別計算にする。

 3歳以上児の配置基準を別計算とし、常時2人以上配置とすることで、3歳以上児のみを戸外散歩により十分に遊ばせることが可能になり、3歳以上児に必要な運動量の確保、最低限の質の担保が可能になります。
 逆に、現行の配置基準のままだと、3歳以上児には保育者が1人しかつかないことになり、引率1人で9人の3歳以上児を連れて外出するのは危険が大きいため、事実上、戸外遊びを保障できなくなってしまいます。都市部では、戸外遊びを確保しなくても良いほどの床面積を確保できないからこその小規模保育所ですので、子どもの発達のためには人手で戸外遊びを保障する必要がありますね。

※1 現行の配置基準 「年齢別に子どもの数を配置基準で除して小数点第1位まで求め(少数点第2位以下切り捨て)、各々を合計した後に少数点以下を四捨五入。必要配置数=(0歳児×1/3 )+{(1歳児+2歳児)×1/6 }+(3歳児×1/20 ) + {(4歳児+5歳児)×1/30 }」且つ「常時2人以上配置すること」

※2 0歳児6人×1/3+(1歳児6人+2歳児6人)×1/6+4人

※3 0歳児3人×1/3 +(1歳児3人+2歳児3人)×1/6 +3歳児3人×1/20 +(4歳児3人+5歳児3人)×1/30=2と7/20を切り上げて3人


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