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成年後見の現場から ~子どものない夫婦は必ず遺言の作成を~遺言は配偶者への責任であり愛の証である [成年後見について]

成年後見人をしていると、しばしば遭遇する法的課題が、
遺産分割未了の亡夫名義の自宅不動産の処分である。

・夫が外で働き、妻が家庭を守るという役割分担のもとで、
自宅不動産が夫の単独所有名義になっている場合が多々あること
・平均余命は、女性86歳に対し、男性79歳と女性が7年長いこと *1
・多くは、夫のほうが妻より年上の婚姻が多いこと
などの要因により、
夫に先立たれた妻が住む自宅不動産の所有名義が、
亡夫の所有名義になっているケースが多く見られる。

そして、子どものない夫婦の場合、現在の民法では 、
相続人は、遺された配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹となる。*2

現在、成年後見制度を利用している方々のボリュームゾーンは、
昭和ヒトケタ以前の世代であり、その兄弟姉妹も同年代。
この世代が育った時代は、家制度の考え方が一般であったことや、
親の代の相続に関しては戦後民法の下であっても、
長男子優先の分配をしているケースも多かったことなどから、
亡夫の兄弟姉妹が、「○○家の財産を、嫁に取られる」という思いから、
遺された妻への相続に協力しないケースや、
遺された妻のほうも、亡夫の兄弟姉妹に遠慮して、
そのまま放置してしまっているケースも多いように思われる。

その結果、
遺された妻が認知症になり、成年後見人が選任された段になって、
自宅不動産を処分して老人ホームで余生を過ごしてもらおうとしても、
自宅不動産が亡夫名義のままになっており処分できない、
行き先がみつからず、病院に社会的入院せざるをえない、
という事態が多々生じているのである。

成年後見人として、自宅の所有名義を整理しようとした場合に、
亡夫の共同相続人である兄弟姉妹の中にも、
認知症で判断能力が低下してしまっている方が含まれていると、
その方々一人ひとりに、成年後見人を選任しないと、
相続手続きが進まなくなってしまう。
非常に骨の折れる作業となる。
手間がかかるのは仕方ないとしても、その間、
当の残された妻は、病院での社会的入院が継続するのである。
社会的入院の生活は、制約も多く、お世辞にも快適とは言えない。

このような事態を回避するためには、
特に、子どものない夫婦にあっては、
遺言を書くことで、自宅不動産の兄弟姉妹との共有を避け、
配偶者が安心して遺された人生を過ごせるように手を打っておくことが、
先に逝く配偶者の責任であり、愛の証というものだろう。

__

*1)平成22年簡易生命表 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/01.html

*2)相続分は、故人が亡くなった時期によって異なる。子のない夫婦の場合以下の通り。
  昭和22年5月2日以前の相続は、家督相続制度
  昭和22年5月3日~昭和55年12月31日までは配偶者2/3、兄弟姉妹全員で1/3
  昭和56年12月1日~配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4


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