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不動産管理会社の役員報酬と成年後見 [成年後見について]

不動産管理会社の役員報酬と成年後見

超高齢社会に突入して、最近、増えてきているご相談は、
親から相続した不動産を、不動産管理会社で管理し、
子どもたちは不動産管理会社の取締役として役員報酬を得ていたが、
本人が脳血管障害やアルツハイマーなどにより認知症となってしまった、
自宅をバリアフリー化するために家を建て替えようとおもったところ、
銀行や住宅メーカーから、成年後見制度を利用しないと契約できないと言われた、
という類のご相談です。

(ちなみに、プライバシー保護の観点から類似の事例を組み合わせた設例です。)

     ●=■
   __|___
  | |  |  |
  兄 姉  |  妹
        |
  相談者=本人


成年後見・保佐の開始審判を受けると、
会社の取締役の欠格事由にあたるため、
役員の地位を失ってしまいます。
そうなると、役員報酬を受け取れなくなってしまいます。

他方、収益用不動産による上がりを、
役員報酬ではなく株主への配当として分配してしまうと、
すべて利益処分となり、課税対象となってしまいます。

こうなる前に、判断能力がある段階で、任意後見契約を活用するなど、
対策をとっておくことをお勧めします。

2014年2月5日追記
既に、判断能力が低下してしまった方についての次善の策は、
ケースバイケースになりますので、ご相談ください。

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成年後見の現場から ~子どものない夫婦は必ず遺言の作成を~遺言は配偶者への責任であり愛の証である [成年後見について]

成年後見人をしていると、しばしば遭遇する法的課題が、
遺産分割未了の亡夫名義の自宅不動産の処分である。

・夫が外で働き、妻が家庭を守るという役割分担のもとで、
自宅不動産が夫の単独所有名義になっている場合が多々あること
・平均余命は、女性86歳に対し、男性79歳と女性が7年長いこと *1
・多くは、夫のほうが妻より年上の婚姻が多いこと
などの要因により、
夫に先立たれた妻が住む自宅不動産の所有名義が、
亡夫の所有名義になっているケースが多く見られる。

そして、子どものない夫婦の場合、現在の民法では 、
相続人は、遺された配偶者と亡くなった人の兄弟姉妹となる。*2

現在、成年後見制度を利用している方々のボリュームゾーンは、
昭和ヒトケタ以前の世代であり、その兄弟姉妹も同年代。
この世代が育った時代は、家制度の考え方が一般であったことや、
親の代の相続に関しては戦後民法の下であっても、
長男子優先の分配をしているケースも多かったことなどから、
亡夫の兄弟姉妹が、「○○家の財産を、嫁に取られる」という思いから、
遺された妻への相続に協力しないケースや、
遺された妻のほうも、亡夫の兄弟姉妹に遠慮して、
そのまま放置してしまっているケースも多いように思われる。

その結果、
遺された妻が認知症になり、成年後見人が選任された段になって、
自宅不動産を処分して老人ホームで余生を過ごしてもらおうとしても、
自宅不動産が亡夫名義のままになっており処分できない、
行き先がみつからず、病院に社会的入院せざるをえない、
という事態が多々生じているのである。

成年後見人として、自宅の所有名義を整理しようとした場合に、
亡夫の共同相続人である兄弟姉妹の中にも、
認知症で判断能力が低下してしまっている方が含まれていると、
その方々一人ひとりに、成年後見人を選任しないと、
相続手続きが進まなくなってしまう。
非常に骨の折れる作業となる。
手間がかかるのは仕方ないとしても、その間、
当の残された妻は、病院での社会的入院が継続するのである。
社会的入院の生活は、制約も多く、お世辞にも快適とは言えない。

このような事態を回避するためには、
特に、子どものない夫婦にあっては、
遺言を書くことで、自宅不動産の兄弟姉妹との共有を避け、
配偶者が安心して遺された人生を過ごせるように手を打っておくことが、
先に逝く配偶者の責任であり、愛の証というものだろう。

__

*1)平成22年簡易生命表 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life10/01.html

*2)相続分は、故人が亡くなった時期によって異なる。子のない夫婦の場合以下の通り。
  昭和22年5月2日以前の相続は、家督相続制度
  昭和22年5月3日~昭和55年12月31日までは配偶者2/3、兄弟姉妹全員で1/3
  昭和56年12月1日~配偶者3/4、兄弟姉妹全員で1/4


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交通事故における後見人報酬の扱い/赤本2012年版下巻(講演録)によせて [成年後見について]

2010年6月6日に、このブログに、
「高次脳機能障害の方の将来の保佐人報酬」についての記事を書いた。
その後も、交通事故による高次脳機能障害の方については、
後見人・保佐人報酬を損害賠償額に積算する提訴・和解を重ねてきた。

そうしたところ、平成23年(2011年)10月8日に行われた、
東京地方裁判所民事交通部の講演会で、
「交通事故の被害者に成年後見人が選任された場合に伴う諸問題」が
取り上げられていた。(赤い本2012年版下巻(講演録編)5頁~14頁)

15件の裁判例の表を見ると、
後見開始審判にかかった費用を請求して認容されているケースは多いが、
専門職後見人の立場で訴訟を起こしたケースで弁護士費用に代わる、
後見人報酬が請求・認容されているケースが1件あるだけで、
将来の後見人報酬を正面から請求して認容されているケースは見あたらない。

小河原寧裁判官は、この点、一歩踏み込んで、
「後見人報酬相当額は、事故と相当因果関係のある損害といえるでしょう」
と述べている。

そして、具体的な報酬相当額については、
既に報酬決定がなされているケースでは、それをベースに算定し、
未だ一度も報酬決定がなされていないケースでは、
東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」※が、
「通常の後見事務を行った場合の報酬のめやすとなる額は月額2万円です」
とされているのが、一つの基準になるだろうと述べている。

http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/koken/pdf/koken_qa/a13.pdf

ここで、一つ留意しておきたいことは、
東京家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」では、
基本報酬の最低額は月額2万円としているものの、
「管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、
財産管理事務が複雑,困難になる場合が多いので,
管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円~4万円,
管理財産額が5000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円とします。」
とされているのである。

小河原裁判官の講演録にあてはめると、
一度も報酬決定がなされていないケースでは、月額2万円を基準に、
将来の後見人等の報酬が算定されてしまうであろうことに対し、
既に報酬決定がなされているケースでは、
上記「成年後見人等の報酬額のめやす」に基づいて、
管理財産額に応じて、月額2万円より高い報酬額を基準に、
将来の後見人等の報酬が算定されることになる。

交通事故被害者の後見人等として、損害賠償請求訴訟を遂行する場合、
まずは、自賠責保険を請求する、
次に、人身傷害保険に加入している場合はこれを請求する、
これにより、交通事故による賠償金の一部を取得して、
管理財産額を一定程度押し上げた上で、
家裁に対して報酬付与審判の申立をして報酬決定を受ける。
そして、これを元に損害賠償額としての将来の後見人等の報酬を積算する、
というのが、最も被害者に有利な請求方法ではないだろうか。





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リーガルソーシャルワーク [成年後見について]

 2年前の11月から東京弁護士会の高齢者・障害者総合支援センター担当の嘱託弁護士を拝命しています。
 東京家庭裁判所後見センターに対する後見人等の候補者推薦件数は著しく増加しています。あるいは地域包括支援センターや社会福祉協議会からの弁護士紹介依頼、高齢だったり障がいをお持ちの方からの出張相談依頼、弁護士あっせん依頼も増加しています。できるだけマッチングの良い弁護士を紹介したい、と腐心しています。
 高齢社会の進行に伴い、あるいは、主に金融機関のコンプライアンス(法令遵守)の浸透により、「成年後見」が一般の生活に普及していることを感じます。
 後見人の仕事も、法的課題に対応する医療(治療)モデルから、法的課題のみならずご本人の生活全般に目配りする福祉(生活)モデルへと、舵を切る必要性を痛感しています。
 私自身が社会福祉士の専門学校に通いだしたときから10年が経ちます。
 いよいよ弁護士も、福祉関係者と一つの輪になって、リーガルソーシャルワーカーとして活動すべき時代が到来したと感じます。「先生」という呼称を当たり前に思うのではなく「さん」付けを当たり前として、対等の社会資源として、ご本人のために活動する、という意識改革が、弁護士に必要だと思います。
 「人々の住む街へ」更に一歩を踏み出すときだと感じています。

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東京弁護士会の会報 LIBRA 2010年12月号に拙稿が掲載されました。 [成年後見について]


東京弁護士会が発行する会員向けの会報誌「LIBRA」の2010年12月号に
「特集 成年後見の実務」という拙稿が掲載されました。

・どういう場面で成年後見がつかえるのか(総論)
・東京家庭裁判所・後見センターでの申立の実務(各論1)
・成年後見人として実務上直面する「こういうときどうする?」(各論2)

について、コンパクトにエッセンスを凝縮したつもりです。
関心のある方は、ご一読ください。

http://www.toben.or.jp/news/libra/pdf/2010_12/p02-15.pdf



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後見人候補者が見つからなくても… [成年後見について]

この春、東京家庭裁判所の後見センターから東京3弁護士会への
後見人等候補者の推薦依頼に対して、
各弁護士会が事案に応じた候補者を推薦する制度が始まりました。

これによって、後見人候補者を自分で見つけなくても、
迅速に、裁判所が適切な後見人を選任してくれることになります。


今までは、後見人候補者を申立人が自分で見つけてこないと、
後見開始審判の申立をして、本人が後見相当だとなっても、
なかなか引き受けてくれる専門職後見人が見つからない、ということで
時間がかかっていました。

この、後見人候補者を見つけるのに時間がかかる、という
ボトルネックを解消して、後見が必要な方には、
速やかに後見人を選任できる体制を整備しましょう、というのが、
この制度の趣旨です。

昨年秋より、東京弁護士会の嘱託を拝命して、
私もこの制度の立ち上げにかかわってまいりました。

今のところ、東京弁護士会では、推薦依頼が来てから、
事案の評価
 ↓
事案に応じた候補者のピックアップ
 ↓
理事者と関連委員会での検討
 ↓
候補者への打診
 ↓
裁判所への推薦、という段階を踏みつつ、
5日程度の期間で推薦できています。

その後、裁判所がチェックをして正式に選任にいたります。


今後も、利用しやすい成年後見制度を目指して、
さらに改善していきたいと思います。


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成年後見制度における身上監護を考えるシンポジウム [成年後見について]

先週の金曜日、豊島区高齢者福祉課の主催で、
豊島区内の地域包括支援センターや介護保険事業者の方々を対象に、

「成年後見制度における身上監護を考える
~身上監護は財産管理と車の両輪~」

というお題で講演会がありました。

リーガルサポート東京支部の司法書士さん、
東京社会福祉士会「ぱあとなあ」の社会福祉士さんとともに、
パネリストを務めさせていただきました。

成年後見制度というと、
「管理すべき財産をお持ちのお金持ちのための制度でしょ」
という誤解が世間に蔓延しているように思います。

しかし、お金持ちも貧しい方も、
生活するためにはお金を使わなければなりません。
医療費を払ったり、ヘルパーさんの利用料を払ったり、
老人ホームと入居契約をしたり、その費用を払ったり、
あるいは、もっと卑近なところでは、毎日の食べ物の購入まで、
人が生きていくためには「お金を使う」ことが必要です。
成年後見制度は、判断能力が低下した方に代わって、
ご本人のために「お金を使う」ための制度です。

こういった身の回りのことを含む生活全般に目配りをするのが身上監護。
その意味では、生活に目配りする身上監護と、
お金を適切に支出する財産管理とはコインの裏表の関係です。

弁護士や司法書士だけでは、生活全般への目配りは十分ではありません。
ケアマネさん、ヘルパーさん、デイサービスの事業者さん、
主治医、病院ケースワーカー、その他諸々の関係者が、
ご本人を中心にチームとして連携していくことが大切です。

・・・そんな話を、それぞれの立場から、口々にお話ししました。
会場の参加者の方からもたくさんの質問が出て、大変盛り上がりました。


タグ:#seinenkouken
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