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厚生労働省「保育施設における事故報告集計」によせて -その2・発生状況検証のための研究班設置を! [保育について]

厚生労働省「保育施設における事故報告集計」によせて
-その2・発生状況検証のための研究班設置を!

今年も、厚生労働省から「保育施設における事故報告集計」が公表されました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000036122.html

特徴的な点についてコメントしておきます。

その2・発生状況検証のための研究班設置を!

(1) 認可外保育施設と認可保育所での死亡事故発生率の差が急拡大

まずは、以下の死亡人数の推移を見ていただきたい。

             平成22年□□平成23年□□平成24年□□平成25年
認可保育所□□□□□□□□□□□5人□□□□□□2人□□□□□□6人□□□□□□□4人
(10万人当たり)□□□□0.24人□□□0.09人□□□0.28人□□□0.18人
認可外保育施設□□□□□□□□7人□□□□□12人□□□□□12人□□□□□□15人
(10万人当たり)□□□□□3.4人□□□□5.2人□□□□6.4人□□□□□8.1人
認可外/認可の差□□14.3倍□□□53.6倍□□□23.4倍□□□45.0倍

□□□□□□□(厚生労働省「保育施設における事故報告集計」をもとに作図)


10万人あたりの死亡事故の発生率は、
認可保育所では0.09人~0.28人で年によって凸凹があるのに対し、
認可外保育施設では、この4年間、3.4人から8.1人へと、
右肩上がりで増え続けています。

そして、認可保育所と認可外保育施設での死亡事故で発生率を比較すると、
昨年1年間では、45倍も多く、認可外保育施設で死亡事故が起こっています。

この差は、何を意味しているのか?

子ども・子育て支援法における新たな保育制度で、
どのような基準を設けるべきなのか、
認可保育所と認可外保育施設の死亡事故発生率を分けている部分を
掘り下げて基準に反映すべき、大きな差だと思います。

(2) SIDS・死因不詳で思考停止の警察・行政

しかし、保育施設での死亡事故、特に、午睡中の死亡事故に関しては、
解剖の結果、SIDS(乳幼児突然死症候群)や、死因不詳、とされることが多く、
その結果、
警察は「事件性無し」とか「解剖結果が出ないとなんとも言えない」となり、
保育行政も「死亡原因がわからないから何をすればいいかわからない」となり、
事故発生時の保育体制、運用などについて、誰も何も調査しないまま、
思考停止状態で有耶無耶にされてしまうことが相次いでいます。

(3) 「顔色や呼吸状態をきめ細かく観察する」の実施状況の調査・把握を

前の章でも書きましたが、
仮に100歩譲って、SIDSが死亡原因だったとしても、
SIDSの発生には、低酸素・呼吸抑制が介在して、
呼吸中枢が未熟な乳幼児が呼吸停止する、という説が有力です。

ということは、
午睡中も「顔色や呼吸状態をきめ細かく観察する」という規定を遵守していれば、
子どもが呼吸が止まってチアノーゼになった瞬間に、
子どもをさするなど刺激したらリカバーできるということです。
観察を怠っていたからこそ、SIDSで亡くなっているのです。

では、何故、観察を怠ってしまうのか?
午睡の時間帯に、職員が保育施設内に何人いて、どこで何をしているのか?
午睡中の子どもを観察していたという職員は、どのくらいの距離で、
どのくらいの頻度で、どのように観察していたのか?
職員の配置数の問題なのか、シフトの運用の問題なのか、
観察の方法についてのノウハウ不足なのか、などなど。

午睡中に子どもが亡くなった保育現場の状況を精査して、
最低基準や、保育所保育指針・認可外保育施設指導監督基準などに
反映していくことが、再発防止の第一歩だと思います。

(4) 自治体にはノウハウがない

では、上記の調査は誰がやるのがふさわしいのでしょうか。
保育所の認可・監督も、認可外保育施設の監督も、都道府県知事の権限です。
実際には、市区町村に権限が事実上おろされている地域も多いのが実情でしょう。

しかし、年に全国19人の死亡というと、殆どの自治体にとっては、
死亡事故が起こったときの調査・検証に備えよう、などといわれても、
日常的にやらなければいけない仕事を多数抱えており、
いつ起こるとも起こらないとも判らないことに、人も金も割けない、
ノウハウも蓄積がない、というのが本音でしょう。

実際、
平成25年3月8日に「保育所及び認可外保育施設における事故防止について」
(雇児保初0308第1号・厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知)が
都道府県・指定都市・中核市宛に発出され、
その中で、
「事故の状況を的確に把握し、効果的な事故防止対策を実施するために、
事故発生時の保育所等からの報告が速やかに行われるよう
一層の指導をお願いする。」、
「保育所において死亡事故等の重篤な事故が発生した場合には、
保育の実施者である市町村において、
再発防止のための必要な検証が行われるよう、
管内市町村への周知を図られたい。」
との指摘がありますが、
平成25年に認可保育所で発生した4件の死亡事故について、
市町村による検証はなされていないとのことです。
(東京新聞平成26年2月1日朝刊)

(5) 国が研究班を設置し、事故報告直後に派遣を!

一見明らかに、認可保育所と認可外保育施設で死亡事故発生率に差がある、
その原因を調査・分析・解明する、というような仕事は、
一自治体が行うには件数のばらつきが大きく、効率が大変悪く、
成果も期待できないでしょう。

国が、保育、医療、心理、法律、統計などの専門家を集めて研究班を設置し、
死亡事故報告があったら直ちに調査員を派遣するなどして、
きめ細かな情報を集め、分析し、原因を解明し、
もっとも効率的な方法で、再発防止策を打ち出していくべきでしょう。

現在、子ども・子育て会議で、保育施設における重大事故の報告義務、
検証制度が議論されています。
是非、具体化に向けて、研究班を設置していただきたいところです。

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